おーぷん2ちゃんねるプログレ板に2019年6月に立った、貼られた曲を「1」がすべて聴くという企画スレの全35レスを追ったまとめである。日本のプログレ黎明期からキング・クリムゾン、クラウトロック、スペインの無名バンドまでが飛び交った。
出典: おーぷん2ch プログレ板『貼られたプログレを>>1がすべて聴く』(元スレ・投稿はCC0ライセンスに基づき転載、確認日: 2026年8月2日)
過疎板で始まった「全部聴く」宣言
スレッドを立てたのは、プログレ板の過疎ぶりを逆手に取った1人だった。冒頭でこう宣言している。
過疎だから貼られたら全部聞く
ド定番はだいたい聞いたつもりだからマイナーな物でも隠れた名曲でも良いから皆のおすすめをおしえてくろ
ちな5大の中だとelpが一番好き
「5大」とはキング・クリムゾン、イエス、ピンク・フロイド、ジェネシス、エマーソン・レイク&パーマー(ELP)を指す、プログレ好きの間で使われる括りである。この1行の自己紹介から、35レスにわたる選曲リレーが始まった。

邦プログレの先駆者たち——マンドレイクと四人囃子
最初に貼られたのは、平沢進が在籍していたことで知られるバンド、MANDRAKEの「飾り窓の出来事」だった。
MANDRAKE
飾り窓の出来事PART IとPART II
これに対して1は素直に驚きを返している。
すげぇ
平沢進はちょっとだけ知ってるけどこんな時期もあったんやな..pmodelまでしか知らんかった
ジャカジャカ掻き鳴らしながらもしっかりメロディアスで気持ちE
お返しとばかりに1が貼ったのは、四人囃子の「一触即発」。
音源はこれしかない感じかな?
よく見たら隣にマンドレイクスレが立っとった
ここ来るのは結構最近だから気づかんかったすまん
お返しに同じく70年代日本のプログレバンド
四人囃子より「一触即発」
有名なのしか返せん、すまん
「空が破けるゥ!」という1の短い感想のあと、しばらく間が空き、別の住人が「邦プログレならこれも忘れちゃいかんで」と一曲を追加。数日後に戻ってきた1は「帰てきた」と挨拶し、紹介された邦プログレのバンドについて調べたことを報告している。
ドロドロする曲調いいね..でも飽きさせない展開
調べたら日本のプログレを語るときに欠かせないグループなんだな…いいバンドを知った
まだ活動してるっぽいわね..すごいわ
筋肉少女帯と美狂乱——ドロドロ路線の系譜
邦プログレの流れを受けて、1は筋肉少女帯の初期曲を紹介する。
じゃ私からは筋肉少女帯の初期のプログレしてる一曲を…
こちらも違うタイプのドロドロな気がする
特にイントロと歌詞の一言目がすごい好き
プログレガチ勢からは怒られそうだけど..
これに住人が「筋少は割とプログレ要素強いと思うンゴねぇ」と同意し、続けて「和製キングクリムゾン」と称される美狂乱の音源を投下する。この呼び名がきっかけとなり、スレの話題は本家キング・クリムゾンへと流れ込んでいく。同じ掲示板発の邦楽名盤リストとしては、当サイトの「友達に邦ロックの名盤教えてって言われたんやが——なんJ民と選ぶ最初の3枚」も近い温度で読める。
ELPからキング・クリムゾンへ——「太陽と戦慄」の壁
1が「好きと言っていた」ことをきっかけに、住人はELPの演奏を紹介する。
イッチが好きと言ってたのでELP
カールパーマーはASIAの時は加速しまくってたけどこの頃は割と安定してるのよな 何があったのか
1はライブ盤への驚きを返しつつ、話題は美狂乱がデビュー前にキング・クリムゾンのコピーバンドだったという逸話を経て、キング・クリムゾンそのものへと移る。
sterlessたまらん
クリムゾンは比較的聞きやすかった1stとREDがドンピシャだった
でもほかアルバムもっと聴き込んでみるお
別の住人が『太陽と戦慄』(Larks’ Tongues In Aspic)の楽曲を貼ると、1は次のように応じている。
太陽と戦慄はワイの中ではクリムゾンの有名な盤の中で一番難しい印象があるわね
ゆっくり消化してみるンゴ
続けて『Lizard』を勧められた1は、ボーカルがイエスのジョン・アンダーソンだと知って驚く。
りーざど聞いたことなかったわ
ええねぇ放牧的なメロデイ でも放牧的といってもフロイドの牛とはまた違った感じ
ボーカルはyesの人やんけ!複雑なアーティストの出入りには詳しくないからこうたまに発見すると面白いわ(にわか並み感)
これに対し住人が補足する。
クリムゾンのギタリストをイエスのボーカルが自分の所に勧誘したんやが逆にお前がクリムゾンに来いって言われてこのコラボが実現したらしいで
ジョン・アンダーソンがロバート・フリップを誘おうとして、逆にクリムゾン側へのゲスト参加が実現したという、スレならではの又聞き情報である。裏取りは各自の楽しみとして残しておきたい。
国境を越えて——クラウトロックからスペインまで
スレ後半は一気に視野が世界に広がる。クラウトロックの代表格CAN、シャルマン三兄弟ことシュルマン兄弟が率いたジェントル・ジャイアント、そしてイタリアン・プログレとマウロ・パガーニが立て続けに貼られた。
クラウトロックの代表的なバンド、CAN
シャルマン三兄弟のジェントルジャイアントをすこるか?
イタリアのプログレもすこっといてや
マウロ・パガーニも貼っとくぞ
1はしばらく間を空けたのち「久々に戻ってきたです」「おそなってすまんかった」と再登場する。スレはさらに1ヶ月ほど時間を置いて、スペインのバンドpigmyの「Abriendo El Retablo」という、YouTubeにも見当たらないほどの珍しい選曲で更新された。
つべに無かったからこんなサイト貼るけどあかんかったらすまんな
スペインのバンド pigmy やで
スレはこの投稿のおよそ4ヶ月後、2019年11月に届いた1件の画像リンクを最後に止まっている。過疎板の1スレが、日本語圏のプログレ愛好者たちの手によって、国と時代を横断する小さなディスクガイドに育っていった記録である。洋楽全般の掲示板発リストに関心があれば、当サイトの「ガチで名盤だと思う洋楽アルバム——なんJ民の選盤がわりと渋い」も合わせて読める。
このスレで語られたバンドの中に、聴いたことのない名前はあっただろうか。マンドレイク、美狂乱、pigmy——過疎板だからこそ生まれたこの選曲リレーの続きを、コメント欄で聴かせてほしい。数年越しのやり取りが名盤リストに育つ例は他にもあり、当サイトの「オススメのシューゲイザーバンド教えてクレメンス——7年後に答え合わせできる良スレだった」もその一つだ。